人と人との交流~ボランティア体験実習を終えて~

作業療法学科昼間部1年生は、6月から7月にかけて、5週間にわたり、毎週水曜日、計5日間、同じ学生が同じ施設に通い、ボランティア活動を体験しました。「体験実習」という新しい授業での学外実習です。

 

 

今年の作業療法学科1年生は、ほとんどが高校を卒業してすぐに入学してきました。医療や福祉の現場を見た経験も少なく、身近に高齢者や障がい者の方がいない人も多いのが現状です。

 

 

これからリハビリテーションや作業療法を学んでいくのですが、そもそも、高齢者や障がい者の方々と接したことが少ないのです。なので、仕事のイメージがつかないだけでなく、お年寄りや障がい者の方々とどのようにお話をしたら良いかわからないという学生が多いのです。

 

 

作業療法士は、対象者の方とコミュニケーションを取りながらリハビリテーションを進めていくことが求められます。そのためには、知識や技術を学ぶと同時に、お年寄りや障がい者の方々と関わり、寄り添いながらお話をする経験が大切だと考えています。

 

 

作業療法学科昼間部1年生のボランティア体験実習は、できるだけ早く、学生が臨床の場でこのような経験を積み、知識・技術だけではない、人と人との血の通った交流ができる人に成長してもらいたいというねらいがあるのです。

 

 

さて、計5日間のボランティア体験は学生にとってどのようなものだったのでしょう?「楽しい」という声も多かったのですが、同時に、「話が続かない」とか「何を話していいかわからない」という戸惑いの声も多く聞かれました。世代の違う若者とお年寄り同士では、共通の話題がなかなか見つからないのでしょう。

 

 

しかし、「次回までに昔の歌を覚えよう」とか「釣りの勉強をしていこう」とか「将棋を覚えよう」など、お年寄りの世界に近づこうと努力する姿が見られ、頼もしく思いました。誰から指示されなくても、自発的に、自分にできることに一生懸命取り組もうという姿勢が現れていました。

 

 

 

 

全ての体験実習が終わり、7月20日にセミナーを行いました。学生が小グループに分かれて、自分たちの体験内容やそこで学んだことを発表し合う会です。別科目の「情報科学」の授業の中で学んだ「パワーポイント」を駆使し、イラストや動画が入った、カラフルで、とてもわかりやすい発表がたくさんありました。ここでも、知識や技術はただ受け身的に学ぶのではなく、使う場があってこそ身につくものだと思いました。

 

 

 

 

これから、この学生たちがどのように成長していくのか本当に楽しみです。

 

 

今回のボランティア体験実習では、20を超える施設にご協力頂きました。最後に学生に貴重な経験の場を与えて下さった、利用者の皆さま、施設の職員の皆さまに心から感謝申し上げます。

 

 

今回のボランティア実習にご協力いただいた施設(五十音順)

 

あい介護老人保健施設

 

介護老人保健施設足立老人ケアセンター

 

介護老人保健施設あんず苑

 

介護老人保健施設エンジェルコート

 

介護老人保健施設小金井あんず苑

 

介護老人保健施設ハートケア流山

 

介護老人保健施設フォレスト西早稲田

 

介護老人保健施設ふれあいの里

 

介護老人保健施設みかじま

 

介護老人保健施設みぬま

 

高齢者在宅サービスセンター西新井

 

デイサービスセンターさや

 

デイステーション涼風

 

東京総合保健福祉センター江古田の森デイサービスセンター江古田の森

 

特別養護老人ホーム金井原苑

 

錦クリニック デイケアセンター

 

ニチイホーム下丸子

 

三鷹市高齢者センターけやき苑

 

有料老人ホームサンライズヴィラ海老名

 

陽和病院

 

よりあいデイ・つくし

 

老人保健施設ビバ・フローラ

 

みなさんの力が必要です~病院から地域へ広がる理学療法士

こんにちは!理学療法学科夜間部学科長の鈴木雅男です。

 

突然ですが、皆さんは地域リハビリテーションという言葉をご存知でしょうか?「地域」と「リハビリテーション」という言葉はわかると思いますが、「地域リハビリテーション」となるとよくわからないという方も多いのではないでしょうか。

 

 

今回はその地域リハビリテーションについてお話しします。

 

 

地域リハビリテーションという言葉は、以前からあったもののその重要性について近年特に言われるようになって来ました。

 

 

地域リハビリテーションについて、日本リハビリテーション病院・施設協会では、次のようにその概念を表しています。

 

 


地域リハビリテーションとは、障害のある人々や高齢者およびその家族が住み慣れたところでそこに住む人々とともに、一生安全に、いきいきとした生活が送れるよう、医療や保健、福祉及び生活にかかわるあらゆる人々や機関・組織がリハビリテーションの立場から協力し合って行う活動のすべてを言う

 


 

 

初めて聞いた方はわかりにくいと思うので背景を含め解説をしたいと思います。

 

 

病気や怪我で障害を負ってしまった方や身体の機能が衰えていく高齢者の方が、健康な時と同じ家や環境で暮らすことは大変になってしまうことがあります。
しかし長年住み慣れた家や環境で暮らすことは、今まで培ってきた周囲の人たちとのつながりや家族とのつながりを継続できるため、精神的にも安心して暮らせることが期待できます。

 

 

そのため住み慣れた環境での生活を継続できるように、身体機能や生活に必要な能力の維持目的で、病院や施設に通って行う通所リハビリテーションや、職員が家に訪問して行う訪問リハビリテーション、また高齢者の健康の維持増進を目的に市区町村で行われている保健事業の拡充が図られています。

 

 

そしてこれらリハビリテーションは多くの職員によって行われており、その一旦を理学療法士が担っています。

 

 

つまり「地域」とは、障害のある人々や高齢者が暮らす環境を意味していて、特定の地域を指しているわけではありません。そしてそこでの暮らしを継続するための活動全てを「地域リハビリテーション」と呼んでいます。

 

 

皆さんはリハビリテーションや理学療法士の職場と言えばすぐに「病院」をイメージするでしょう。確かに病院でのリハビリテーションも重要です。しかし病気や怪我によって障害をかかえている方も多く、超高齢化社会によって高齢者も増加している現状では、生活を支えるための仕組やそれを担うマンパワーが必要になっています。

 

 

病気や怪我をされた方の病院でのリハビリテーションは3ヶ月から半年、長くても1年以内が多いのに対して、自宅に帰ってから必要とされるリハビリテーションは一生です。

 

 

つまり理学療法士の必要性は、病院はもとより地域リハビリテーションを担う施設に広がっています。

 

 

まだまだ理学療法士が、みなさんの力が、必要とされています。

 

 

最後まで読んでくださりありがとうございました。この記事がみなさんの今後の仕事を考えていくうえで、また資格所得を考えていくうえでの参考になればと思います。

飛行機人間を育てること

理学療法学科夜間部教員の有本です。今回は、地域リハビリテーションを一つのキーワードとして話をしてみたいと思います。

 

 

地域包括ケアシステムとは…

 

 

「自助・互助・共助・公助」により、住み慣れた地域で安心して生活できるよう様々な資源を活用して、包括的な支援・サービスを提供していくシステムの構築を実現させる取組です。

 

 

厚生労働省ホームページより

 

 

なぜ、こうした地域ケアシステムが推進されるのでしょうか?

 

 

それには、日本が抱えている問題、それは少子高齢社会が大きく関与しています。

 

 

 

私は現在「地域理学療法」という科目を担当しており、地域リハに関して考えてもらう授業を心掛けています。

 

 

地域リハを展開していく際には、多様な価値観によって生活をしている方々に接します。一セラピストの主観だけで対応できるものではありません。リハビリテーションでよく言われている、他職種協働の作業がより一層求められると思います。

 

 

そこで直面する課題は一対一の対応をしている訳ではなく、多面的な側面から問題を捉える視点が必要です。こうした場面では、知識を活用する能力、他者に考えを伝える能力、他者の意見を聞く能力といったものが欠かせません。知識偏重のキーワードを覚えるだけの学習ではなく、そうした能力を育むことも大切だと考えます。

 

 

日本の教育は、脱知識偏重を掲げて「ゆとり教育」を展開しました。ところが結果として学力低下を招いたとして、失敗の烙印を押されてしまいました。しかしながら、近年では「アクティブラーニング」が広く展開され、伝達された知識を暗記するだけではなく、テーマに対して自らの考えを述べ、他者と意見を交換する取り組みがなされています。

 

 

セラピストの養成校で学ぶ学生は、学習する範囲が大変広く、また仕事をしながら学校に通うなど大変忙しい状況にあります。そうした状況においては、効率よく結果を得たいと思う気持ちもわかります。効率よく学習し答案に正解を記入する作業は、学校という限られた空間においては通用しますが、さまざまな問題・価値観が混在する社会に出ると戸惑うことも多いと思います。

 

 

外山滋比古氏は、『思考の整理学』という著書のなかで「グライダー人間ではなく飛行機人間を育てないといけない。」と述べています。

 

 

グライダーは自分では飛ぶことができず、先導するものが必要です。他者の力で上空まで引き上げてもらい行き先も風任せです。それに対して飛行機は自らのエンジンで上空に昇り、目的とする場所に飛んで行けます。

 

 

当校の理念でもある「人間性豊かな即戦力」とは、グライダー人間ではなく飛行機人間を育てることであると思います。

 

 

地域リハビリテーションにおいてもそうした能力が求められていると強く感じます。もっとも、地域リハに限ったことではなく臨床では総じて求められているものだとは思いますが。

 

 

地域リハというものを通じて、学びというものを一度見つめ直してもらえたら、とも思います。

 

 

『思考の整理学』、この本は大変示唆に富む良書です。皆さんも読んでみてはいかがでしょうか。