みなさんの力が必要です~病院から地域へ広がる理学療法士

こんにちは!理学療法学科夜間部学科長の鈴木雅男です。

 

突然ですが、皆さんは地域リハビリテーションという言葉をご存知でしょうか?「地域」と「リハビリテーション」という言葉はわかると思いますが、「地域リハビリテーション」となるとよくわからないという方も多いのではないでしょうか。

 

 

今回はその地域リハビリテーションについてお話しします。

 

 

地域リハビリテーションという言葉は、以前からあったもののその重要性について近年特に言われるようになって来ました。

 

 

地域リハビリテーションについて、日本リハビリテーション病院・施設協会では、次のようにその概念を表しています。

 

 


地域リハビリテーションとは、障害のある人々や高齢者およびその家族が住み慣れたところでそこに住む人々とともに、一生安全に、いきいきとした生活が送れるよう、医療や保健、福祉及び生活にかかわるあらゆる人々や機関・組織がリハビリテーションの立場から協力し合って行う活動のすべてを言う

 


 

 

初めて聞いた方はわかりにくいと思うので背景を含め解説をしたいと思います。

 

 

病気や怪我で障害を負ってしまった方や身体の機能が衰えていく高齢者の方が、健康な時と同じ家や環境で暮らすことは大変になってしまうことがあります。
しかし長年住み慣れた家や環境で暮らすことは、今まで培ってきた周囲の人たちとのつながりや家族とのつながりを継続できるため、精神的にも安心して暮らせることが期待できます。

 

 

そのため住み慣れた環境での生活を継続できるように、身体機能や生活に必要な能力の維持目的で、病院や施設に通って行う通所リハビリテーションや、職員が家に訪問して行う訪問リハビリテーション、また高齢者の健康の維持増進を目的に市区町村で行われている保健事業の拡充が図られています。

 

 

そしてこれらリハビリテーションは多くの職員によって行われており、その一旦を理学療法士が担っています。

 

 

つまり「地域」とは、障害のある人々や高齢者が暮らす環境を意味していて、特定の地域を指しているわけではありません。そしてそこでの暮らしを継続するための活動全てを「地域リハビリテーション」と呼んでいます。

 

 

皆さんはリハビリテーションや理学療法士の職場と言えばすぐに「病院」をイメージするでしょう。確かに病院でのリハビリテーションも重要です。しかし病気や怪我によって障害をかかえている方も多く、超高齢化社会によって高齢者も増加している現状では、生活を支えるための仕組やそれを担うマンパワーが必要になっています。

 

 

病気や怪我をされた方の病院でのリハビリテーションは3ヶ月から半年、長くても1年以内が多いのに対して、自宅に帰ってから必要とされるリハビリテーションは一生です。

 

 

つまり理学療法士の必要性は、病院はもとより地域リハビリテーションを担う施設に広がっています。

 

 

まだまだ理学療法士が、みなさんの力が、必要とされています。

 

 

最後まで読んでくださりありがとうございました。この記事がみなさんの今後の仕事を考えていくうえで、また資格所得を考えていくうえでの参考になればと思います。

飛行機人間を育てること

理学療法学科夜間部教員の有本です。今回は、地域リハビリテーションを一つのキーワードとして話をしてみたいと思います。

 

 

地域包括ケアシステムとは…

 

 

「自助・互助・共助・公助」により、住み慣れた地域で安心して生活できるよう様々な資源を活用して、包括的な支援・サービスを提供していくシステムの構築を実現させる取組です。

 

 

厚生労働省ホームページより

 

 

なぜ、こうした地域ケアシステムが推進されるのでしょうか?

 

 

それには、日本が抱えている問題、それは少子高齢社会が大きく関与しています。

 

 

 

私は現在「地域理学療法」という科目を担当しており、地域リハに関して考えてもらう授業を心掛けています。

 

 

地域リハを展開していく際には、多様な価値観によって生活をしている方々に接します。一セラピストの主観だけで対応できるものではありません。リハビリテーションでよく言われている、他職種協働の作業がより一層求められると思います。

 

 

そこで直面する課題は一対一の対応をしている訳ではなく、多面的な側面から問題を捉える視点が必要です。こうした場面では、知識を活用する能力、他者に考えを伝える能力、他者の意見を聞く能力といったものが欠かせません。知識偏重のキーワードを覚えるだけの学習ではなく、そうした能力を育むことも大切だと考えます。

 

 

日本の教育は、脱知識偏重を掲げて「ゆとり教育」を展開しました。ところが結果として学力低下を招いたとして、失敗の烙印を押されてしまいました。しかしながら、近年では「アクティブラーニング」が広く展開され、伝達された知識を暗記するだけではなく、テーマに対して自らの考えを述べ、他者と意見を交換する取り組みがなされています。

 

 

セラピストの養成校で学ぶ学生は、学習する範囲が大変広く、また仕事をしながら学校に通うなど大変忙しい状況にあります。そうした状況においては、効率よく結果を得たいと思う気持ちもわかります。効率よく学習し答案に正解を記入する作業は、学校という限られた空間においては通用しますが、さまざまな問題・価値観が混在する社会に出ると戸惑うことも多いと思います。

 

 

外山滋比古氏は、『思考の整理学』という著書のなかで「グライダー人間ではなく飛行機人間を育てないといけない。」と述べています。

 

 

グライダーは自分では飛ぶことができず、先導するものが必要です。他者の力で上空まで引き上げてもらい行き先も風任せです。それに対して飛行機は自らのエンジンで上空に昇り、目的とする場所に飛んで行けます。

 

 

当校の理念でもある「人間性豊かな即戦力」とは、グライダー人間ではなく飛行機人間を育てることであると思います。

 

 

地域リハビリテーションにおいてもそうした能力が求められていると強く感じます。もっとも、地域リハに限ったことではなく臨床では総じて求められているものだとは思いますが。

 

 

地域リハというものを通じて、学びというものを一度見つめ直してもらえたら、とも思います。

 

 

『思考の整理学』、この本は大変示唆に富む良書です。皆さんも読んでみてはいかがでしょうか。

戦術メモリー

みなさんこんにちは。作業療法学科夜間部学科長の深瀬です。6月に入り、いまひとつジメジメした天気が続いております。関東は梅雨入りしたとのこと、体調管理にお気をつけ下さい。

 

さて、作業療法学科夜間部4年生は、今週の月曜日より臨床実習が始まりました。

 

 

それぞれ病院や施設で頑張っていることと思います。まだまだ緊張が解けない頃であるとは思いますが…

 

 

4年生は2月末に3週間の実習から帰ってきてから先週まで、一生懸命に実習の準備をしていました。その頑張りは、きっと患者様に伝わることでしょう。

 

 

 

 

私も10数年前の自分の実習の体験を思い出します。

 

 

実習初日、緊張していた私を優しく向かい入れてくださった実習指導者の先生方や患者様。そして臨床現場の「厳しさ」や「楽しさ」を肌で体験していき、自分の作業療法士としての基礎を築いていきました。

 

 

スポーツの世界で「戦術メモリー」という言葉があります。試合の中で起こる戦術や経験の蓄積のことです。試合の中で、状況に応じて適切な選択をするために必要な機能で、練習の時よりも試合を通して養われるものと言われています。

 

 

 

 

ただ何も考えずにプレーしているだけでは「戦術メモリー」は蓄積されず、一つ一つのプレーをきちんと分析し、次に同じような場面があった時にどういう選択をするかを考えることで積み重ねられます。

 

 

実習では、決して学校で体験できないような経験ができます。いわば試合のようなものです。経験を礎とし、作業療法学生から作業療法士へと成長するために、「戦術メモリー」をたくさん積み重ねて帰ってきてほしいものです。