理学療法学科夜間部教員の有本です。今回は、地域リハビリテーションを一つのキーワードとして話をしてみたいと思います。
地域包括ケアシステムとは…
「自助・互助・共助・公助」により、住み慣れた地域で安心して生活できるよう様々な資源を活用して、包括的な支援・サービスを提供していくシステムの構築を実現させる取組です。
厚生労働省ホームページより
なぜ、こうした地域ケアシステムが推進されるのでしょうか?
それには、日本が抱えている問題、それは少子高齢社会が大きく関与しています。
私は現在「地域理学療法」という科目を担当しており、地域リハに関して考えてもらう授業を心掛けています。
地域リハを展開していく際には、多様な価値観によって生活をしている方々に接します。一セラピストの主観だけで対応できるものではありません。リハビリテーションでよく言われている、他職種協働の作業がより一層求められると思います。
そこで直面する課題は一対一の対応をしている訳ではなく、多面的な側面から問題を捉える視点が必要です。こうした場面では、知識を活用する能力、他者に考えを伝える能力、他者の意見を聞く能力といったものが欠かせません。知識偏重のキーワードを覚えるだけの学習ではなく、そうした能力を育むことも大切だと考えます。
日本の教育は、脱知識偏重を掲げて「ゆとり教育」を展開しました。ところが結果として学力低下を招いたとして、失敗の烙印を押されてしまいました。しかしながら、近年では「アクティブラーニング」が広く展開され、伝達された知識を暗記するだけではなく、テーマに対して自らの考えを述べ、他者と意見を交換する取り組みがなされています。
セラピストの養成校で学ぶ学生は、学習する範囲が大変広く、また仕事をしながら学校に通うなど大変忙しい状況にあります。そうした状況においては、効率よく結果を得たいと思う気持ちもわかります。効率よく学習し答案に正解を記入する作業は、学校という限られた空間においては通用しますが、さまざまな問題・価値観が混在する社会に出ると戸惑うことも多いと思います。
外山滋比古氏は、『思考の整理学』という著書のなかで「グライダー人間ではなく飛行機人間を育てないといけない。」と述べています。
グライダーは自分では飛ぶことができず、先導するものが必要です。他者の力で上空まで引き上げてもらい行き先も風任せです。それに対して飛行機は自らのエンジンで上空に昇り、目的とする場所に飛んで行けます。
当校の理念でもある「人間性豊かな即戦力」とは、グライダー人間ではなく飛行機人間を育てることであると思います。
地域リハビリテーションにおいてもそうした能力が求められていると強く感じます。もっとも、地域リハに限ったことではなく臨床では総じて求められているものだとは思いますが。
地域リハというものを通じて、学びというものを一度見つめ直してもらえたら、とも思います。
『思考の整理学』、この本は大変示唆に富む良書です。皆さんも読んでみてはいかがでしょうか。