スポーツ選手と関わることも多い理学療法士。理学療法士を目指される方の中には、将来はスポーツ分野で活躍したいと考えている方も少なくないのではないでしょうか。
日リハ理学療法学科の内山先生は、理学療法士として競泳選手のサポートを行っていて、2022年10月に開催された「いちご一会とちぎ国体」では、競泳のチームスタッフとして活躍されました。
アスリートのサポートを行うため、国際PNF認定セラピストやBOBATHセラピストにもなり、日々の自己研鑽を怠らないと言う、内山先生。
そんな内山先生に、スポーツ選手と関わる事になったきっかけ、アスリートと関わるために大切な事や本校の授業でのフィードバックについてなど、お話を伺いました。
Q:内山先生は日リハでの教員の他に、国体や日本選手権など主要な大会に理学療法士として帯同されていますが、競泳選手に関わるようになった経緯を教えてください。
内山:もともと自分自身も競泳をやっていて、選手時代にお世話になった理学療法士の先生がいまして。理学療法士になってからトップチームのケアを見学させてほしいと冗談で言っていたら「じゃあ明日から来れる?」と聞かれ、勢いで「はい」と答えたのがきっかけです。
実際には次の日から強化選手の合宿で見学ではなくケアスタッフの一員としてしばらく帯同することになるんですけどね。
2017年5月の日本選手権では、元100mバタフライ日本記録保持者の河本耕平さんをサポート
Q:競泳以外にスポーツ選手に理学療法士として関わることはありますか?
内山:以前はスポーツ整形クリニックで働いていたので、バレーボール、野球、テニス、陸上、格闘技など様々なスポーツに関わらせていただいています。変わり種ではラクロスやセパタクローの選手なんかもいましたね。
Q:スポーツ選手に理学療法士として関わる上で、特に心がけていることはありますか?
内山:プロの選手はその仕事で報酬をもらうわけです。
たとえ運動学的に正しいことをしても、素晴らしいトレーニングをしても、結果に繋がなければ意味がありません。つまり結果が全てです。例をあげると身体がかなり非対称の選手を左右対称になるよう矯正したら、故障は少なくなったが成績が悪くなったなんてこともありますから。
だからこそ、運動学的な理論やトリートメントをしながら、選手の細かな要望を聞きすり合わせていく作業が重要だと個人的には思います。それと、結果につながるためであれば相談に乗ったり、一緒にサウナにいったりとPTの仕事ではないと考えられるようなことも何でもやります。
2022年10月の「いちご一会とちぎ国体」では競泳のチームスタッフとして活躍
Q:これまでにかかわったスポーツ選手で、心に残るエピソードがあれば教えてください。
内山:自分が関わった選手が「初めて感じる感覚です」とか、「常に帯同してほしい」と言われるのはうれしいです。選手がレースで記録や優勝などももちろんうれしいですが、以前関わったことがある選手が日本代表に入りTOKYO2020に出場したのは感慨深いものがありました。
Q:本校の授業で、こうしたご経験を学生に対してフィードバックすることはありますか?
内山:スポーツ現場で用いる技術やテクニックに関しては授業を通して伝えさせていただいています。幸い、実技の授業を多く担当させていただいていますが、学生さん達も楽しそうに一緒に学んでくれていますね。
Q:スポーツ選手に関わるために特別に学んでいることはありますか?
内山:私自身は理学療法士以外の国家資格は持っていませんが、PNFという感覚を刺激し運動を引き出すような治療コンセプト(もともとはポリオの治療に開発された治療法)を学び続けています。
2015年に国際PNF協会認定セラピストになりました。同じようにBOBATHという中枢神経疾患に対して行うコンセプトも学んでいまして2018年にBOBATHセラピストにもなりました。この2つのコンセプトは、本来は中枢神経(脳・脊髄)にアプローチするものですがアスリートのみならず整形疾患を抱えるクライアント様に応用活用し、私の施術の中心となっています。ひょっとしたらトレーナーの中では異質かもしれません(笑)が、運動パフォーマンスの向上を皆実感してくれています。
もちろんほかにもマリガンコンセプトやマイオチューニング、筋膜系の治療コンセプトなどの痛みを取り除くような様々なことも学んでいます。まあ、個人的には一生勉強だと思っています。
日本大学水泳部の杉山コーチとは、PNF認定コースを一緒に受講して以来の友人
Q:これから理学療法士(スポーツ選手との関わりを目指す方を含めて)を目指す方々へのメッセージをお願いします。
内山:スポーツの場合は突然(例えばレースの直前に)オーダーが入り、その場で解決しなければならないことが多いのですが、そこで対処できるかどうか?表情は変えず冷静に対応しつつ、実は脳はフル回転で大汗をかいています。
ですから、そういう時に自分の学んできたことや引き出しの多さが試されます。自分的にはそういうヒリヒリした現場に身を置いていたいし、そういった真剣勝負をさせてくれる環境が自分を成長させてくれると思っています。
ちなみに本学ではPNFの授業もかなり多くコマ数に入っており、より専門的な技術を身に着けることができると思いますので、入学された方にはより細かく自分の培ってきたものを伝えていきたいと思います。
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