作業療法学科専任講師
齋藤 久恵先生
主語は患者様。
それを忘れないでほしい
学科 | 作業療法学科専任講師 |
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主担当科目 | 精神障害評価学/精神障害治療学 |
専門分野 | 精神分野 |
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趣味/特技 | 読書 |
「患者様から教わること」
- Q. 教員として、学生に何を伝えたいですか?
- 私は自分が実際に臨床で経験したことを中心に学生に伝えたいと思い授業をしていますが、それらは患者様から教えて頂いたことばかりです。
学生たちが実習に向かう際、必ず「主語は患者様」という言葉で送り出します。実習を自分が評価される場と考えてしまう学生も多いため、「指導者の顔色ではなく、患者様の顔色(思い)を見ること!!」と伝えます。
実習は机の上では学べない、実際に患者様と接するリアルな体験をさせて頂ける中から、本当に多くのことを学ばせて頂ける場です。自分の知識のなさが、患者様に悪い影響を与えてしまうこともあります。まずは、目の前の方が何を思っているのか考えることのできる(考えようとする)人間になってほしいと望みます。もちろん、人の気持ちを理解することはとても難しいことですが、、、。
とくに精神障害領域には、自分の感情や意思を言葉で伝えられない患者様もいらっしゃいます。そんなときは、無理に会話をしようとするのではなく、まずは関係性の樹立を心掛け、沈黙でいても安心できるような、心を開いていただける関係を少しずつ築いていき、この人になら話してもいいと思って頂けるよう、決して先導することなく寄り添っていく必要があるんです。そんなことも学生たちに伝えていけたらと思っています。 - Q. 理学療法士/作業療法士の仕事の魅力は?
- いろいろな方の人生に直接関わらせていただける仕事である、というところです。こんなにもいろいろな年代や性別の方々の人生に関われる仕事はほかにはないと思います。
そして、患者様からエネルギーを頂ける仕事です。その方が望む生き方、その人らしく生きていく手助けをさせて頂きながら、自分自身も多くのことを学ばせて頂き経験させて頂けます。
「一生続けられる仕事を目指して」
- Q. なぜ、理学療法士/作業療法士の道に進んだのですか?
- 20代の頃、金融関係のOLを4年ほど経験しました。働くうちに一生続けられる仕事に就きたい、という想いが強くなり退職し、医療・福祉関係の道に進むため国立療養所東京病院付属リハビリテーション学校へ入学しました。入学当初の志望は身体障害分野でしたが、実習を通して精神障害分野に興味を持ち、その道の臨床へ進み、臨床を10年以上経験した後、日リハの教員になりました。
- Q. どんな学生でしたか?
- 学校は一学年20名程度で、朝9時から18時まで授業がありました。生徒の主体性を重んじる内容で、本人のやる気次第という印象です。
私は片道2時間以上かけて通っていましたので、学校に着く頃にはすでにクタクタで、、、。それでもいつも一番前の席に座り、授業に集中しようとはしていましたが、睡魔とたたかうことも多々あり、、、でした。(笑)
「仲間と助け合って乗り越えた学生時代」
- Q. 先生の学生時代と今の教育環境に違いはありますか?
- まず、学校の数がぜんぜん違います。私の入学当時は関東に私立の大学や専門学校はなく、作業療法士の人数も全国で約5千人弱程度しかいませんでしたが、今は9万人近くいます。
当時は国家試験に関しては参考書などは一切なく、みんなで情報交換をしながら乗り越えました。クラスのほとんどが社会人経験者で、わからないところは先生に聞く、というよりみんなで助け合いながら学んでいました。先生方には生き方など人生について教えて頂きました。今ほど学習環境が整っていなくても、仕事をやめてまで学校に入学する人が多かったので、高い意識をもって学ぶ学生が多かったという印象の思い出がありますが、これは時代の違いもあるかもしれません。
「学生達の底力」
- Q. 教員になってから、日々学生と接していて感じることは?
- 学生たちが持っている「底力」です。特に国家試験など、簡単にはいかないこともあります。でも、国家試験まで歩んでこれた学生たちは、実習などの経験を通し作業療法士としての道を進む決心をした学生たちです。それでも成績が伸び悩み、自信をなくしてしまう学生もいます。すべての学生に同じ指導をするのではなく、それぞれの強みや弱点を見いだし、本人が伸びるやり方へ導いていくことが大切です。「やらされた」「教えられた」ではなく、「自分達で乗り越えた!」「自分はやれば出来る!」という自信や自主性を引き出す黒子に徹したいという思いで接しています。学生たちの底力、そして成長する力にはいつも驚かされます。
「自分には無い考え方を知る」
- Q. 先生の息抜き方法を教えてください。
- 昔から読書が好きで、オールジャンルなんでも読みます。ただ没頭して読んでいることも多いですが、仕事のヒントを得るために読むこともあります。自分自身にはない考え方に触れられるところが魅力ですね。
この仕事は、あらゆる経験が役立つ仕事です。いろいろな人の生き方や価値観に触れることで、自分の引き出しを増やしていかなければなりません。たとえば、自分のマイナスがプラスに作用することも。自分の弱みを知ることで、患者様の気持ちがわかることもあります。
あとは、時々お酒を嗜む程度、、、。
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- Q. 最後に学生たちへメッセージをお願いします。
- 今の世の中は、多様な生き方が増えたことで生きやすい分、自分自身で選択しなければならないことも増えました。
学生たちには、治療者としての関わりだけではなく就労支援や生活支援など、地域で生活していく患者様を助け、支えていける作業療法士を目指してほしいです。