理学療法学科 夜間部 卒業生
梅林 遼太さん
自ら動くことで、現実を創る
学科 | 理学療法学科 |
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卒業年度 | 2012年度卒業 |
勤務先 | M&メディカルリハ株式会社【脳梗塞メディカルリハ】 (執行役員兼つくば教育センターPNF指導員) |
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趣味/特技 | 野球、音楽(歌、ギター)、車、バイク(モータースポーツ)、球技全般 |
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プロ野球選手を目指していたという梅林さん。現在は理学療法士として、スポーツ分野を中心にトレーナー、クリニック、訪問、そして自らが中心となって勉強会を立ち上げたりと精力的に活動されています。そんな梅林さんからの熱いメッセージ。
「プロ野球の延長線上に」
- Q なぜ、理学療法士の道に進んだのですか?
- 元々、社会人野球のクラブチームに所属して、プロ野球選手を目指していました。ただ、プロスポーツ選手は選手生命が短いので、引退後も野球に携わりたいと考えて、スポーツ選手を育成する学校に通ってトレーナーの勉強もしていました。その過程で、理学療法士という職業を知りました。
私は一人ひとりと深く対峙して、その選手の能力を伸ばせるような、個別性のある指導ができるトレーナーになりたいと思っていました。とは言ってもトレーナーは一人で多くの選手を同時に見ていく「1対多」の関係になることが多いです。その点、理学療法士なら「個別性のある指導やケアができる」と思い理学療法士の道を選びました。
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「モチベーションの高い仲間と共に」
- Q 理学療法士の養成校は他にもありますが、日リハに決めたポイントを教えてください。
- 入学前から勤めていた整形外科クリニックに勤めていたのですが、そこで働いている理学療法士の方が機能解剖に力を入れており、その授業があるのは日リハだけでした。
加えて、自宅から近くて通いやすかったことも決め手になりました。
昼間部ではなく夜間部を選んだ理由は、学校に通いながら現場でトレーナー活動もしていたかった事、社会人を経験している方が多い夜間部の方が学生のモチベーションも高いのではと考えたからです。
実際に、クラスメイトにはすでに医療系の資格をお持ちの方、大学とダブルスクールの方など、経験が豊富でいつも刺激を受けながら学校生活を送っていました。
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「大きく成長した4年間」
- Q 日リハの先生方の印象はいかがですか。
- 日リハの先生方はみなさん「臨床家」だったなと思います。「感覚を大事にする先生」「理論的に説明してくれる先生」など、個性的な先生方ばかりでしたが、実践的な指導が多く、現場で働いていてトレーナー活動も平行していた私にとっては、非常に勉強になりました。
- Q 夜間部のクラスメイトとのコミュニケーションはいかがでしたか
- クラスで私は年齢が下の方だったので、人生の先輩方に他の職業のことや様々な考え方などを教わり理学療法以外のこともたくさん学びました。人間的にも大きく成長できた4年間でした。当時のクラスメイトとは、お互いに忙しくてなかなか会う時間はとれていませんが、今でも連絡を取り合います。今、COLORS~Saitama PNF~というPNFの勉強会を開催していますが、元々はクラスメイトとやっていた勉強会が母体となっています。時には日リハの先生にも参加してもらうこともあります。
余談ですが、実は当時のクラスメイトと結婚しました(笑)
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「現場における日リハブランド」
- Q 理学療法士として仕事をしていて、日リハの強みを感じる時や学びが生きていると感じる時があれば教えてください。
- 臨床的(実践的)な授業が多く、動作分析や治療法を学ぶ授業が多いのも日リハの特徴です。日リハでは、手技や治療法を幅広くたくさん学ぶので、理学療法士としての視野も広がり現場で生かされています。
あと、いわゆる治療法だけではなく、ケーススタディなども繰り返し行うことで、臨床推論等の評価治療における思考過程などをしっかりと学ぶことができます。
お陰様で、実習や新人の時にそれほど悩むこともありませんでした。現に、実習先からは日リハの学生はすごい良くできるよねと言う声が聞かれます。
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「本質をつかむきっかけ」
- Q 実習で苦労したことなどはございますか?
- 老健施設での実習で、本当に大きな気づきを得る経験をしました。
ある患者様に対して、私は根拠に基づいて筋道を立てて治療を行っていたのですが、なかなか自分の思ったような結果が出ずに悩みました。その時、日リハの当時の担任の先生に相談に乗っていただいたのですが、先生から「その治療は、君がやりたいのもので、本当に患者さまに必要なことではないよね?」と言われたのです。
その時、私はまさに自分がやりたい治療を行なっていたことに気づかされました。そのことから、「私たちの仕事は患者さまがあって成り立つもので、常に患者さまに寄り添いながらベストな選択をすることが本質だ」と教えられました。
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「先進的な技術を求めて」
- Q 国際PNF協会認定セラピストを取得されていますが、なぜPNFの認定資格を取得されたのですか?
- 先ほどもお話ししましたが、日リハに入学前から勤めている整形外科クリニックの科長がPNFを中心に臨床をされていて、その効果に感動したのがきっかけで学び始めました。学ぶならしっかり学びたいと思ったので、単純ですが認定セラピストを目指しました。
PNFの認定は日本では医療保険の加算対象にはなりませんが、やはり社会的信用を得る肩書きとしては大きな価値があると思います。
ボバースと並び古くから有名なPNFですが、日本国内で認定セラピストは90名程度と80年の歴史を考えると非常に少数です。 - Q 国際認定を取得されてから変わったことはありますか?
- 「日本PNF協会」のスタッフ、PNFのAsian symposiumを運営する「PCRE(ピクリ)」という団体の運営スタッフなど、多くの場所で活動できるようになりましたし、自分で立ち上げた埼玉県のPNF勉強会「COLORS」も国際認定を取得したことで実現できました。
さらに言えば、現在の施設で教育センターPNF担当として紹介を受けたのも、国際認定を取得していたからでした。
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「様々な経験をすることが成長の鍵」
- Q 現在までにもかなり幅広く活躍されていますが、それぞれどういった経緯でやられることになったのでしょうか。
- まず、整形外科クリニックは日リハ在学中からアシスタントとして、現在は理学療法士としてずっとお世話になっています。
介護分野には、日リハの実習が訪問リハの施設で、興味があったのもあり転職しました。その会社ではデイサービスでの所長や、機能訓練指導員、訪問看護ステーション等様々な経験をしました。余談ですが、実習でお世話になった言語聴覚士の先生がたまたま後から入職してきて一緒に働いています。
- Q 女子野球チームトレーナー、女子野球医科学研究会に関わることになったのは、どのような経緯があったのですか。
- 女子野球は私が現役で社会人野球をやっていた頃にチームメイトに女子選手が数名在籍し、その選手対は皆非常に楽しそうに野球に取り組む姿に感銘を受けたのがきっかけです。それから女子野球に目を向けるようになりました。
日リハ在学中に整形外科クリニックでアシスタントをしていると、小学生の女子野球選手も来院していましたのですが、「中学に行ったらどうするの?」と聞くと「女子野球部はないからバスケやテニスかな」と話す選手が多く、非常に残念に感じていました。理学療法士として何かできることはないかと。
そこで、こちらから女子野球チームに直接連絡を取ってトレーナーとして関わらせていただきました。
そしていざ、女子野球界に入ってみると、トレーナーはおろか指導者もままならなく、チーム数も少なく野球を続けたくても続けられない現状を目の当たりにしました。しかしそんな中選手達は野球が出来ることに感謝し、目一杯楽しんで活動しておりました。
人気は少しずつ上昇し、チーム数は増えていますが、今度は指導者の方々の大半は男子野球での知識や練習方法を取り入れていることが多く、女性であることを考慮されていないため、それが原因でケガをする選手やパフォーマンスが上がらない選手も多いのが現状です。
そこで女性医学をはじめ医科学サポートを女子野球界に普及させるために「女子野球医科学研究会」を立ち上げました。 - Q COLORS~Saitama PNF~はご自身で立ち上げた勉強会なのですね。
- PNFの正しい普及や、PNFを学びたい人の研鑽の場として立ち上げました。国際PNF協会のコースは日数も長く費用も高いため気軽には参加できません。かといっていきなり日本PNF協会の勉強会に出るのも敷居が高いという方達のための気軽に参加できる勉強会です。
元々は日リハの同期や先輩とPNFの練習会をはじめたのがそもそものきっかけで、それからPNFのコースや、セミナーで出会った近隣の理学療法士を迎え入れて、私が国際PNF協会認定を取ったタイミングで、メンバーの中から有志でスタッフを募り立ち上げました。
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「自ら動くことで実現できる」
- Q スポーツの分野で活躍したいと考えて理学療法士を目指す人は多いです。梅林さんのように活躍するためのアドバイスをお願いします。
- とにかく行動することです。
「実力がついてから」とか「コネクションができてから」などは良く聞く台詞ですが、それではいつまでたっても実現しません。ネットで調べるのも良いですし、もし知り合いに既に活躍している人がいれば、話しを聞くのも良いと思います。場合によってはSNSで活躍している人の投稿を見るだけでも良いかもしれません。
とにかく、やりたいと思った時に何でもいいから行動に移せば「その世界に入るにはどうすればいいのか」「どんな知識や技術が足りないのか」「どこで勝負できるか」など、良くも悪くも色々なことが見えてきます。
行動しなければ何も見えません。何も見えなければ、どんな努力をすれば良いのかもわかりません。だから実現できません。 - Q 自分から行動してチャンスをつかみに行くという事ですね。
- 待っているだけでチャンスが巡ってくることは、かなり確率が低いです。しかし一方で、その世界に飛び込んで横の繋がりなどを増やし、努力を続けていくことで、誰かがその努力を見ていて声をかけてくれることも増えてきます。
これはスポーツ分野だからとか関係なく、理学療法士として必要な考え方だと思います。
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「決して楽な世界ではないけれど、、」
- Q 最後に、これから日リハを目指す方々へメッセージや、やっておいたほうが良いことなどetc….お聞かせください。
- はっきり言って理学療法士についてほとんど何も知らないまま入学して、何となく理学療法士になれてしまった方が、かなりの数いるように感じています。
どの仕事もそうですが、理学療法士も例外なく楽ではありません。責任も多く、一生自己研鑽が必要です。そのためにお金も時間もある程度必要になります。
今後、そういった努力を積極的にできない理学療法士は患者さんから必要とされなくなります。自分や自分の家族が患者になった時のことを考えれば分かると思います。
色々と言いましたが、「理学療法士として仕事をして、楽しくて幸せかどうか」を考えて、そう思えるのであれば、精一杯努力してください。