作業療法学科 昼間部 卒業生

荻原 玲奈さん

コロナ禍で経験した長期実習が、
作業療法士としての礎に

学科 作業療法学科 昼間部
卒業年度 2022年3月卒業
勤務先 埼玉セントラル病院
趣味/特技 シュノーケリング
  • 作業療法学科昼間部の4年生の時に、クラスメイトとの座談会「マスクの奥の本音(日リハホームページに掲載中)」に登場し、コロナ禍のリアルを友人たちとともに語ってくれた荻原玲奈さん。現在は作業療法士として回復期病院で活躍している彼女に、入職後の心境、日リハ時代の思い出等を伺いました。(インタビューは2024年1月に収録)。

    「入職後、2年間を振り返って」

    Q. 荻原さんは作業療法士として働かれてもうすぐ丸2年が経過するわけですが、振り返ってみてどんな感想を抱かれますか?
    現在、私は回復期リハビリテーション病棟に勤務しています。急性期病院から患者様が転院されてくるのですが、主には脳血管疾患の症状を抱えた方や大腿骨頸部骨折など整形の方に対して、寝たきり防止や家庭復帰を目的としたリハビリを担当しています。患者様はご高齢の方が多いです。

    率直な感想としては、「2年は早かったなあ」ということに尽きますね。2022年3月に卒業した私たちの代は、3年次・4年次の本格的な長期実習がコロナ禍とまるまるかぶっていた世代になります。コロナ禍で制限された長期実習でのリハビリしか経験していなかった自分にとって、入職後は初めて経験することばかりで。目の前の仕事と真摯に向き合っていたら、気づいたらもう2年が経過していたという感じです。

    それでも、患者様から「あなたは話しやすいから、また来てね」と言っていただけると、コミュニケーションが上手くいき、患者様の気持ちに寄り添えていると感じることができてとても嬉しいですね。

    Q. 入職後のエピソードで何か印象に残っていることを教えてもらえますか?
    入職1年目の新人のときに、ベッドから車椅子などへ乗り移りさせる「トランスファー」が全介助の患者様がいらっしゃいました。頸椎損傷の方でしたが、大柄の男性だったこともあり抱え込んで移動させることにとても苦労したことを覚えています。このときは先輩に相談してコツを教えてもらったことで上達し、自分の自信につながりました。

    私は、女性としては背が高い方なのですが、そのおかげで患者様から「安心感がある」と言っていただくこともあって、そんな面でも患者様と信頼関係が築けるのは良かった点だと思います。
  • 「実習時間の長さが日リハ入学の決め手」

    Q. 荻原さんは座談会「マスクの奥の本音」のなかで、「日リハを選んだ理由は臨床実習が多いから、臨床に出た時に即戦力になるから」とお話をされていました。実際に現場に出られて、荻原さんが日リハを選んだ理由は活きていると感じますか?
    進路を決める際、4年制の日リハと3年制の専門学校とで迷っていました。そこから「しっかり学びたい」という想いが勝って、4年制の日リハを選んだ経緯があります。日リハの実習時間は「厚生労働省が定める作業療法士養成校としての基準よりも断然多い」ということを知って、それを経験すれば現場に出た時に役立つ人材になれると思ったからです。実際はコロナ禍という予期せぬ事態に見舞われるわけですが、こればかりはどうしようもないですね(苦笑)

    でも、私が経験した実習では、患者様や先輩方、他部門の方とのコミュニケーションや情報共有の大切さを感じることができたのと、先生方がコロナ禍でもなお臨床時間を確保してくださったおかげで、貴重な経験をたくさんすることができたと思っています。
  • 「沖縄での長期実習が自分自身の礎に」

    Q. 荻原さんは先ほどコロナ禍での実習の難しさについて話されていましたが、改めて荻原さんの長期実習経験について伺えますか?
    実習では、沖縄県の那覇市にある通所のリハビリ施設を体験しました。コロナ禍に加えて初めての一人暮らしで、始まる前はワクワクする気持ちと不安と心配が入り混じっていて、そんな気持ちのまま飛行機に乗った時のことを今も鮮明に憶えています。

    結果的には実習地の方や家族や友人たちに支えられ、最終日に帰るのが寂しいくらいに充実した実習になりました。担任の先生が実習地訪問をしてくださったり、お褒めの言葉や応援メールをいただいたりと背中を押してくれたので、実習も最後まで前向きに望めましたし、臨床実習での経験を通して「作業療法士になりたい!」と改めて強く思うことができましたね。

    Q. 実習で大変だったことや経験できてよかったことのエピソードを教えてください。
    そうですね……、今となっては笑い話かもしれませんが、認知症検査でよく使われる「長谷川式認知症スケール(HDS-R)」を取らせていただいたときに戸惑った経験があります。認知症の疑いや認知機能の低下を早期に発見することができるスクリーニングテストの「HDS-R」で、30点満点のうち20点以下だと認知症の疑いがあるというものです。

    その質問のなかに野菜について訊く項目があって、患者様が答えてくださったのですが、肝心の私が沖縄の郷土野菜の名称がわからなくてテストにならなかったという笑。

    それ以外にも印象に残っていることがあります。私たちの代の長期実習はコロナ禍だったので、一般の病院はご家族と触れ合う機会が制限されていましたが、沖縄での実習先が通所施設だったからこそ、そうしたこともしっかり経験することができました。たとえば利用者様のご自宅への送迎に同行して、デイサービスや自宅での生活のイメージをつけることができました。

    今の回復期の職場では、患者様のご家族と会話することが多いのですが、長期実習で患者様だけでなくご家族との会話も大切な仕事の一つであると身をもって実感し、そのイメージをつかむことができたのは良かったと思います。

    実習の最初の頃はコミュニケーションに対しても及び腰でしたから。「これは聞いていいのかな?」と考え込んでしまって、そうすると雑談もうかつにできなくなって、天気の話しかできなかったくらいなので。バイザーさんに「そこまで考えなくていいよ」と言っていただけて、「思ったことや感じたことを患者様に伝えていこう」と思い直すことができました。

    実習ではわからないことがたくさんあって当たり前で、恥ずかしがらず素直にバイザーさんに打ち明けられてよかったと思いました。それも含めて、沖縄の長期実習での全ての経験が、現在の作業療法士の礎となっています。
  • 「理想の作業療法士になるため、チャレンジの日々」

    Q. 荻原さんの今後の目標を教えてください。座談会では荻原さんは「どんな作業療法士を目指す?」という質問に対して、「様々な分野や領域の経験を積んで、どんな場面であっても多様な専門性を活かして活躍することができる作業療法士」と回答されていました。
    あの当時に語っていた境地に達するにはまだまだ経験不足ですが、目標とする作業療法士に近づくために、今の職場で様々なことに興味を持ってチャレンジしていきたいと思っています。私の職場は、一般病床と療養型病床・精神病床の混合型のケアミックス病院ですので、様々な分野を経験することができます。ですので、色んな分野を経験して分野ごとの強みを活かしたマルチな作業療法士になりたいですね。

    今気になっているのは「3Dプリンター」でリハビリの自助具をつくることです。この前、職場で初めて体験したのですが、先輩と「来年は『3D プリント自助具デザインコンテスト』に出よう!」と約束しました。作業療法士の業務に本人の状況に合わせた福祉用具の選定と使い方の提案がありますが、さらに自助具の開発もそこに含まれます。たとえば「ペットボトルをあけやすくなる自助具」など、“あったらいいな”を形にできれば、より多くの方々の暮らしに役立つことができるので。
  • 「様々なことに興味を持つことが何よりも大切」

    Q. 最後に、作業療法士を目指して日リハへの進学を考えている方へのメッセージをいただけますか?
    さっきもお話した通り、様々なことに興味を持つことは、作業療法士を目指す人にとっては必須で、どんなことであっても将来の自分の役に立つと思います。私の場合は、人と関わることが好きなので、色々な世代の方とコミュニケーションをとることを心がけていました。

    そして、入学後に学ばなくてはいけない勉強量は皆さんの想像以上だと思いますので、勉強はコツコツとやっておいた方がいいです。筋肉や骨の名称を暗記するだけでなく、自分のなかに定着させることができていれば、いざ現場に出た時に必ず活きてきます。このことは現場に出て初めて痛感したことですね。