2021.10.22
理学療法
理学療法を行う前に、患者さんである理学療法が必要な就学児について知っておきましょう。
まず患者さんは、普通学校と養護学校のどちらに通うかということを選択できます。最近は普通学校での受け入れが増えてきており、一般の子どもと同じ条件で育てたいというご両親が選択するケースが多いです。
その選択に関しても、理学療法士はアドバイスを求められるでしょう。患者さんが普通学校で無理なく過ごしていけるかどうか、設備面で調整ができるかどうか、どの程度のサポートが必要なのかなどの説明を行います。
また、普通学校・養護学校のどちらに進んだとしても、学校とご両親と連携していくことが必要です。就学児にとって学校で過ごす時間は病院に来る時間よりもとても長く、また家庭で療育する時間よりも学校を含めた療育の時間が長くなります。
理学療法士も学校での様子をしっかりとヒアリングしていきましょう。学校へ出向くことは難しいケースが多いので、学校の先生方に来ていただくこともあります。ビデオや写真を活用することも良いでしょう。
小学生から高校生という、心身ともに大きく成長している時期の理学療法では、単にリハビリの経過がどうであるという内容以外に、精神的なケアも求められます。患者さんだけでなくご家族に対してもサポートが必要であったり、修学旅行などのイレギュラーなケースにも対応することがあります。
学校・家庭・専門病院・地元病院間での連絡を取り合い、それぞれの不安を解消し、患者さんがそれぞれの時期を楽しく過ごしていけるよう考えていきましょう。
小学生から高校生へ行う理学療法は、第一に『学校内を自分で好きなように過ごせるようにすること』を目指します。自分で歩くことだけでなく、歩行器や杖や車椅子を使うなどしてなるべく長い時間・長い距離を自分で自由に行き来できるようサポートします。そのためにはスキルだけでなく体力も必要になります。
そして次に、患者さんの言語能力・身体能力にもよって、自分の意志や主張を他の人に伝えられるように教えていきます。常に両親が隣にいる幼児期から、日常生活・社会生活を一人立ちしていくために必要な能力です。絵カードや文字盤、ビックマックやメッセイジメイト、トーキングエイド等、必要なリハビリテーションを行っていきます。
こういった学習を進めて行く上で、患者さんの運動障害だけではなく高次脳機能障害にも配慮をしましょう。字を読むことはできるが、書けない、絵が描けない、着衣を何度教えてもできない等の症状を、おぼえる気がない・やる気がないと判断してしまってはいけません。怒りっぽい・甘えがひどい・すぐに忘れる、なども症状の一部です。症状を見極め、学校生活に適応していけるようサポートしましょう。
小学生から高校生へ行う理学療法は、すでに症状のある子どもに対してだけではありません。予防の面でも子どもに対してリハビリテーションを行うことがあります。
例としては、肥満予防や肥満の子どもに対しての運動指導がまず上がります。小児肥満の約70%は成人肥満やメタボリックシンドローム(以下、メタボ)に移行すると言われています。
小児の肥満は、テレビ、ゲーム、塾通いなどの時間が多くなり昔よりも運動の機会が減っていることが原因の一つです。また、食生活の乱れもあるでしょう。楽しみながら体を動かし、家族と協力しながら生活習慣を直していくことが必要です。
また、いわゆる『猫背』と言われる脊柱後弯症も予防指導が求められています。姿勢が悪かったり、筋力が低下していると起こります。運動療法と生活指導により改善が期待されます。
そして逆に、運動のしすぎで体を壊してしまう子どももいます。スポーツで負担をかけすぎてしまったり、オーバーワークしてしまったりして成長障害を受けてしまうケースです。そのため、理学療法士は体育の授業等での運動機能評価や部活動などでのオーバーユースによる成長期の運動器障害の予防やアドバイスなども求められます。
理学療法というと病院で高齢者を診ることが主に思われがちですが、子どもに対しての理学療法も重要な分野です。
これから理学療法士を目指す方は、将来具体的にどういった患者さんと関わっていきたいか考えてみましょう。子どもが好き・子どもと関わる仕事がしたい!という方に小児分野はおすすめです。多感な時期に心身の成長をサポートしていくため、責任も大きいですがやりがいのある仕事です。
「作業療法士と理学療法士の需要と供給、就職状況、年収の違いについて」
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