作業療法士と理学療法士の需要と供給、就職状況、年収の違いについて

作業療法士と理学療法士の数と需要

作業療法士は、回復と心のリハビリテーションにおけるスペシャリストです。人の生活におけるあらゆる活動を本人が望む生活ができるようにしていく治療やサポートを行います。

理学療法士は、身体機能のリハビリテーションのスペシャリストです。身体に障がいのある人の基本的な動作能力の回復や維持、悪化の予防などを行う仕事です。具体的には、起き上がりや立ち上がり、歩行の訓練など、運動的手段や電気的刺激・マッサージなどの物理的手段によって運動機能の回復を図ります。

では、現在実際に作業療法士・理学療法士の資格を持っている人はどのくらいいるのでしょうか?

作業療法士は94,295人・理学療法士は172,084人(2020年度時点)です。

作業療法士の方が理学療法士に比べて有資格者の人数が少ないです。同じ年に国家資格になっていますが、それまでリハビリテーションと言えば身体機能を指すイメージがあったことと、理学療法士の方が養成校の数も多く、受験者数・合格者数ともに多い結果となりました。

ですが、超高齢化社会を迎えている現代においては、活躍の場は作業療法士の方が増えていく余剰があると言えるでしょう。介護との融合や小児領域への展開など、まだまだ作業療法士の需要は増加していきます。

男女割合から見た就職状況について

作業療法士・理学療法士の男女比を見てみると、作業療法士は女性の割合が若干多く6割、逆に理学療法士は女性4割・男性が6割という結果になりました。

就職のしやすさで言うとどちらが良いということはなく、男女平等に就職活動をすることができ、実際に仕事をしてみても大きな男女差はありません。

2つの資格で男女割合の違いがある理由は、仕事内容が作業療法士の方が女性的・女性が得意な分野が多いことがあげられます。

理学療法士は運動機能のリハビリテーションが主で、筋肉トレーニングなどに興味のある方が目指しやすい傾向にあります。対して作業療法士は、生活に即した細かなリハビリテーションが多く、また芸術的な技能があると良いこともあり女性的な側面が要求されやすいのかもしれません。

もう1点、日本では女性の高齢者率が高いため、対象となる患者さんに女性が多く、異性よりも同性の方がより生活に寄り添いやすいという理由も言われています。

就職してからの女性の待遇については、女性の割合の多い作業療法士はもちろんのこと理学療法士についても近年目覚ましく改善されています。結婚・出産してからも仕事を続ける女性が増えていることから、作業療法士・理学療法士がパートタイムで働きやすくなるようにルールが改定されてきました。

作業療法士・理学療法士はどちらも夜勤がなく、ワークライフバランスがとりやすい職業です。病院の受付時間は決まっているので残業も少なく、平均月5時間という調査結果も出ていますよ。

作業療法士と理学療法士の年収の違い

作業療法士と理学療法士に就職したいと考えるなら、年収のことが気になりますよね。

職業別の年収は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査で見ることができます。しかし、「理学療法士および作業療法士」というくくりで発表されているため、2資格は同じ数値になっています。

作業療法士・理学療法士ともに、平均年収は31.8歳で約407万円でした。月額給与は約28万円・ボーナスは年間約70万円です。

2資格をまとめて発表されていますが、分野別の年収比較でみると医療分野が474万円であるのに対し、介護分野は419万円と50万円以上の開きがあります。

一般病院や総合病院といった医療機関はスタッフ数が多い事や教育なども盛んである一方、介護分野は十分な人員を確保しづらいという側面があるようです。

どちらの資格の年収が多いかというよりは、就職する場所によって違いがあります。

理学療法士と作業療法士の違いについて、就職以外の観点からも気になる方は以下のページをご覧ください。

理学療法士と作業療法士の違いとは? >>

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作業療法士と音楽療法士の違いって?2つの資格と仕事内容を比較!

作業療法士と音楽療法士。一見似ているようでいて、実は大きく異なる二つの職業です。この記事では、この二つの仕事の違いについて掘り下げていきます。作業療法士は、日常生活の動作をサポートし、自立を促す仕事。一方、音楽療法士は、音楽を使って心のケアを行う仕事です。それぞれのアプローチ方法や目指すゴールについて解説します。この記事を読むことで、二つの職業の根本的な違いと、それぞれの魅力を理解する手助けになればと思います。

作業療法士と音楽療法士の違い

作業療法士は幅広い分野でリハビリテーションを行い、リハビリテーションの手法の一つとして音楽を用いる事があります。一方、音楽療法士は音楽療法を中心に行っています。

「音楽を仕事にしたい!」という方は音楽療法のみを扱う音楽療法士を魅力に感じると思います。ですが音楽療法士は民間資格であるため、就職するとなると求人が少ないのが現状です。

そのため、音楽療法士として働いている人は作業療法士や社会福祉主事任用資格等の資格を取得しており、その資格で就職をした上で音楽療法を取り入れていくという方が多いです。

作業療法士は国家資格のため、一度取得すれば一生涯にわたって仕事をしていけます。そして、社会的ニーズが高く、求人数も多いことが特徴です。高齢化が進む日本において、ニーズはさらに高まっています。

また、日本音楽療法学会が認定する音楽療法士試験の受験資格を得るのは非常に難しいです。日本音楽療法学会が認定する学校(認定校)へ入学した場合には比較的スムーズに音楽療法士を目指すことができますが、普通の学校を卒業した後に音楽療法士について興味を持った場合、『臨床経験5年以上(音楽を使用した臨床経験2年を含む)を有すること』が受験資格の条件に入ります。

そういった面でも、作業療法士として実務経験を経てから通信教育などを使って音楽療法士を目指す道が選ばれています。

作業療法士の資格・仕事について


作業療法士は、生活に必要な動作の回復と心のリハビリテーションを行います。理学療法士・言語聴覚士と共にリハビリ3資格とも呼ばれます。人の生活におけるあらゆる活動を本人が望む生活ができるようにしていく生きがい支援のスペシャリストでもあります。

リハビリテーション3資格の中で、最も『芸術』と関わりが深いのも作業療法士の仕事です。リハビリテーションは一見芸術関連とは全く関係のないように感じますが、音楽・コーラス・演劇・陶芸・手工芸・美術工芸・絵画制作などなど多種多様な作業活動を通してリハビリテーションを行っていくのです。

学生時代に吹奏楽部だった方や、絵が得意で美術が好きな方などが、作業療法士を目指すケースも多くあります。趣味として好きなことを仕事でも活かせる環境が選ばれています。

音楽のリハビリテーションでは、楽器の演奏によって手足の運動に繋がるだけでなく、ヒーリング効果が期待できます。また、仲間と演奏することにより友情が生まれたり、練習を重ね上達することによる達成感に生きがいを見出したりもします。作業療法士は体だけでなく心のケアも必要になってきますので、こういった効果を活かしていきたいですね。

作業療法士になるためには、養成校で学び国家資格を取得する必要があります。まず養成校に入学・卒業し、国家試験を受験・合格した場合に初めて作業療法士として認められます。養成校へは、高校を卒業してからすぐに入学する方もいますし、最近は社会人からのキャリアチェンジで専門学校などの養成校に入学する方も多くなっています。

音楽療法士の資格・仕事について


音楽療法は、音楽によって障害者や高齢者をサポートする仕事です。リハビリテ―ションの補助手段として音楽療法を用いたり、ベッドサイドで演奏したりします。

音楽療法士は民間資格です。「日本音楽療法学会」が認定する音楽療法士の資格が最もよく知られており、音楽療法士試験に合格することで音楽療法士として認定されます。

試験を受験するには、専門学校(2年以上)・高等専門学校・短期大学・大学いずれかを卒業し、3年以上の臨床経験を積み、資格試験受験制度へ参加することで受験資格を得ることができます。音楽療法学会の認定校を卒業することで直接試験に臨むこともできます。

病院生活・施設生活の中で音楽を楽しみにしている方はたくさんいます。そのような方々の前で演奏をし、喜んでもらうことが音楽療法士のやりがいに繋がっています。

特に近年では、高齢化社会が進行し高齢者が増え、福祉の姿も多様化しています。その中で音楽療法は注目されており、今後需要が高まる資格であると言えるでしょう。

有資格者支援金で資格取得をサポートします

日本リハビリテーション専門学校では、作業療法士や理学療法士を目指している医療福祉系の資格をお持ちの方のキャリアアップを応援する為、有資格者支援金制度を設けています。

対象資格

介護福祉士/保育士/社会福祉士/精神保健福祉士/介護福祉士実務者研修修了者/介護職員基礎研修修了者/介護職員初任者研修修了者/ホームヘルパー(1級もしくは2級)/柔道整復師/はり師/きゅう師/あんまマッサージ指圧師/看護師/臨床工学技士/臨床検査技師/診療放射線技師/救急救命士/歯科衛生士/健康管理士/福祉用具プランナー/福祉住環境コーディネーター/福祉用具専門相談員/アスレティックトレーナー/音楽療法士/准看護師/教育職員免許状(普通免許状)/健康運動指導士/公認心理師/臨床心理士

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精神科領域で働く作業療法士は、どんな仕事をしているの?

ますます需要が増加する精神科

精神科は、今後ますます需要が増加すると言われています。若い世代も含めて精神疾患に悩む人は多く、ストレス社会と呼ばれてる日本。「5人に1人は一生の間に何らかの精神疾患にかかる」と言われており、精神科は非常に身近になってきています。

メンタルをサポートする精神科の患者が増加していくにつれて、そこで働く専門職への需要も増すでしょう。

また、近年ではIT化が進み、AIに取って代わる職業も多いとされています。しかし医療専門職については例外でしょう。その中でも精神科については、人にしかできない領域だと言われています。数十年後を見越しても、精神科がロボット一色になるといったことは考えにくいです。

そのため、作業療法士として就職先を選ぶ際に、以下を選択肢に入れる方も増えてきています。

●精神科病院

精神疾患のある患者さんに接することが主な仕事です。例として、統合失調症・神経症・うつ病・躁鬱病・薬物やアルコール等の依存症・認知症・心身症・パーソナル障がい・てんかんなどがあります。

仕事内容は、精神的な負担の緩和や、作業プログラムによる訓練などを行います。

●精神保健福祉センター

精神保健福祉センターは、病院とは違い、地域住民の精神的な健康を保持・改善するための施設です。

仕事内容は、精神疾患や依存症など福祉に関する講演や研修、また精神保健福祉職に関わる人に向けた技術指導などを行ないます。地域住民の相談窓口として、心の健康に関する様々な相談を受けることもあります。

精神領域における作業療法士の仕事

では、実際に精神領域で働く作業療法士はどういった仕事を行っているのでしょうか。

まず、患者さんの「生活のしづらさ」をアセスメントし、適切な介入により生活の質を向上させることを目的とします。具体的には、創作やレクリエーションといった作業療法活動を通して喜びや達成感を促す関わりから、より実生活で役立つ技能の獲得を目指す関わりへと幅広い関わりを持っていきます。

精神領域でなく身体領域の作業療法でも行うことではありますが、特に精神科リハビリテーションにおいては「実生活に結びつく技能獲得に関する支援」が重要となります。

理由としては、実生活に結びつく技能獲得には個人差があるので、患者さんそれぞれに個別に介入をしていくことが求められます。特に当事者の持つ生活のしづらさには認知機能障害が関連しているとされることから、高次脳機能のリハビリテーションとしての視点から生活における障害を捉えなおす関わりが作業療法士には求められます。

また他職種と同様に、カウンセリングや当事者の環境調整、プログラム提供など幅広い関わりも仕事のひとつです。

精神科におけるチーム医療

「精神科で働く専門職」と聞いて思い浮かぶのは、精神保健福祉士や臨床心理士ではないでしょうか。実際、チーム医療として作業療法士とともにそれらの専門職、そして医師や看護師が一丸となって患者さんをサポートしています。作業療法士以外のチーム医療メンバーについて見ていきましょう。

●医師

まず、医師について。医師の仕事は診察をし、治療方針を立て、薬を処方することです。医師の役割は患者さんだけではなくチーム医療全般にも大きな影響力を持っています。そして患者さんのご家族との信頼関係を維持することや、他のスタッフと連携をとること、モニターや副作用のチェックなどの観察を行うことも役割としてあります。

●保健師・看護師

そして次に、保健師・看護師です。保健師としての役割は、保健所・保健センター等の公的機関で求められるような予防的な視点を持つことです。看護師としての役割は、病院や訪問看護ステーションなどで求められるような治療的視点をもつことです。

また、日頃から体調の変化を感じたり表現したりすることや、早期に他者に相談するという対処法を身につけていけるようサポートしていくことも重要な役目と言えます。

●精神保健福祉士

次に、精神保健福祉士の役割です。精神保健福祉士は、医療・保健・福祉の様々な場面を統合したサービスによって地域生活をサポートすることが仕事です。わかりやすく言うと、患者さんと社会との懸け橋となる存在ですね。

●臨床心理士

臨床心理士の役割は、面接や観察、心理検査などを通して心理学的なアセスメントを行うことです。これが一番「精神科」と聞いてイメージする仕事かもしれません。カウンセリングを行い、コーディネーターとして関わったり、プログラムを提供したりすることが仕事です。他職種と連携を保ちながら柔軟な対応を取ることが求められます。

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